——『成人』を作り始めた頃、durkheimはどんな状態にありましたか?

成人を作り始めた頃は、当時リードギタリストとしていたバンドを脱退することが決まる少し前でした。SlowcoreやShoegazeやNu-Metalの影響下にある楽曲を、自分で作り始めた頃です。

バンドで活動しながらも、そのバンド内では一切曲作りに関与していなかった。だから、自分の構想は自分のプロジェクトで形にしようと思い立った感じでした。

——当時の音楽的な関心について教えてください。

Deftones-CoreやGrungegazeと称されるバンドたちが続々と登場していた時期でした。いわゆるNu-Gazeの流れは2015年くらいから見ていて、Shoegazeが好きな自分にとっては、すごくアツい流れだと思っていました。それこそ、Nothingとか、Whirrとか、Cheatahsとか。

一方で、プレイヤーとしてはフュージョンやプログレの影響下にあるテクニカルなプレイを続けていた。でも、オルタナバンドで活動を続けていく内に、自分のプレイスタイルと音楽的志向の間に齟齬があるような違和感を覚え始めていました。

——EPのタイトルとジャケットについて聞かせてください。なぜ『成人』というタイトルになったのでしょうか?

durkheim 1st EP『成人』インタビュー用写真
durkheim 1st EP『成人』ジャケット。坂本の母が成人式を迎えた頃の写真。

最初に、アルバムジャケットを母の成人式の写真にしようという構想が決まりました。母の成人式の写真が、写真としてイカしていると思ったので、ぜひ使いたいと思いました。リアルに昔の写真だし、durkheimの楽曲は90年代のオルタナに強く影響を受けているので、その質感にも合うと思いました。

自分が成人してからの出来事や考え事が歌詞になっていたりもする。そこに気づいて、タイトルと作品の間に思想的なつながりも担保されると思いました。

写真には、自分の母が自分より若い頃に写っています。自分と顔の似た母が、昔の写真の中にいるという記録は、俺にとって重要です。母の過去と自分の現在が、90年代へのリバイバルやこの作品の音楽と重なっています。

——最初に形になった曲はどれでしたか?

最初に形になったのは、1曲目の「結節点で落ち合おう」です。最初からSlowcore/Shoegaze系の楽曲を作ろうという構想が明確にあって、作り始めた記憶があります。

アルペジオが、そのままリードギターのフレーズのように聴こえる構成になっていて、これは完全に意図して作っています。プロットの段階では、かなりリバーブがかかった浮遊感のあるサウンドにしていましたが、最終的にはドライで、Slowcoreの要素を強調した形に落ち着きました。

——「結節点で落ち合おう」というタイトルには、どんな意味がありますか?

あの頃、俺たちは同じバンドにいて、みんなを熱狂させるようなライブをやっていた。でも俺は脱退して、それも叶わなくなった。その当時の絶望感が、ストレートに具体化された歌詞になっています。

ただ、今では当時の絶望感は払拭されています。活動を異にしても、またどこかで落ち合うことになろう、というメッセージも込めたタイトルです。

手紙といえば、そうかもしれない。でも、俺と同じような気持ちになったことがある人に、どこか共感してもらえたら、それはそれで嬉しいですね。

——2曲目「その再現度」について教えてください。

日常的にフラストレーションや怒りを感じていることに対して、冷笑するようなニュアンスで歌詞を書いています。作り始めた時は、歌詞の構想がないまま走り始めて、Nu-MetalやGrungegazeの流れを汲んだ曲として作り始めました。

「その再現度」は歌詞の最終フレーズとして曲中で回収されます。明らかな過ちを犯し続ける周囲の人間や社会、組織に対する冷笑です。

リフ自体はNu-Metal/Grungegaze/Hardcore/Deftones-Core然としたものですが、ヴォーカルが入っているパートはsus2系コードを中心に展開するマイナーキーに転調しています。そこに煮え切らない、冷たい質感のヴォーカルや不協和音のリードギターが乗ることで、歌詞やタイトルとリンクしていると思います。

——3曲目「Downward Progression」では、どんな日常が描かれていますか?

日常と、そこについてくる鬱の両方です。メンタルの状態をメタファーによって表現するだけではなく、具体的な日常風景を描写することも意図して行っています。

「海底近くの古代魚が 鋭利な牙を剥いたんだ」というフレーズは、俺の中で殺して奥底に滞留した感情が、暴れ出しそうであることを意味しています。

「大嫌いな街に同化して 感傷に浸ってるんだ」
「戦慄したあの日から 一個も変わらないんだ」
「先陣を切って通過した 電車を見ていたんだ」
「散々な毎日過ぎ去って 命を削っていたんだ」

こういう部分には、通勤の場面も、いい思い出がない街も、最悪な思い出も入っています。古代魚の比喩と具体的な日常風景は、別々のものではなく、同じ生活の中にあります。

——4曲目「5/18」は、どんな曲ですか?

計画したデートが頓挫したようなものです。端的に言えば、振られました。

「5/18」というのは、その日に起きる予定だった予定をタイトルにしています。それが叶わなかった理由が、歌詞の中で情景描写されている感じです。

曲としては、1曲目同様かなり遅めのBPMで展開するもので、もっとShoegazeらしい音像に振り切っています。このEPで空間系を全体に深くかけて、残響重視で音像を作り込んだ唯一の曲です。終わりの儚さを感じてもらえると思います。

——制作全体について教えてください。

今回のEPでは、楽曲制作の大半を自分が主導しました。ドラムの打ち込み、ギターの演奏、歌唱、録音、Mix、Masteringまで自分の所掌です。

とにかく頭の中で強くハッキリした構想があったので、それを一心不乱で形にした感じでした。

ベースについては、一度自分が考えたものを踏まえて、mollyに演奏してもらいました。mollyのベースでしか得られない重さや圧、ドスの効いたニュアンスがあります。それは下に質量を感じるような重さというより、ミドルに圧があり、ドスの効いた重さです。俺が弾くと小綺麗にまとまってしまって、オルタナから遠ざかるような感じもある。

mollyのベースは、全楽曲で楽しめると思います。Mixの判断は変わりましたが、録音時点で自分が普段使っているDI/Preampを通して、ある程度補正をかけていました。そのため、Mix上の不自由は少なかったと思います。

——最後に、現在のあなたにとって『成人』はどんな作品ですか?

durkheimの名刺のようなEPであり、初期衝動と粗野さを楽しんでもらえる作品になったと思います。

当時の自分にしか作れないものであったことは間違いありません。それでも、軸としては大切にしたい作品です。

今作り直すなら、という部分もなくはないですが、それは今後の作品に活かしたいです。

durkheimの音はノイジーで暗いです。だからこそ、作品やライブを通じて、あなたとリンクできたらいいなと思います。

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